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漂泊の楽人
   
昭和61年12月 講談社 刊行  浅見光彦シリーズ 第11作
   
ストーリー
主要登場人物
   
   
≪ストーリー≫
   
・プロローグ
   
  漆原肇子のところに松本夫人から見合いの話しが持ち込まれた。相手は中部銀行の取締役沼津支店長の御令息との事。
母・睦子は大変乗り気であったが肇子本人は不釣合いな縁談が不思議でならなかった。
その夜、帰って来た兄・宏にその話しをすると宏も乗り気ではない様子だった。

数日経った日、宏は『あまり気乗りがしないのなら、ちゃんと断ったほうがいいぞ。母さんにはおれから言ってやるから』と言ってきた。また、もし自分が死んだらワープロを“ある人”にあげてほしい。そして、ワープロに自分のフルネームを打ち込んでくれと言ってくれ、とも言った。

見合いは沼津市内のホテルで行われた。相手の矢野貴志は27歳でいかにもマザコンという感じだった。そして、話しの節々に出るエリート意識に肇子も呆れてしまった。

   
・駿河湾殺人事件
   
  静岡県沼津市の千本浜に死体が漂着した。死体は漆原宏だった。警察の調べでは、沼津市内在住の時計商・木村達男の所有するボートで沖に出たとの事だった。
警察は自殺の可能性が高いと言ったが肇子には兄が自殺するはずがないと思った。
警察は一応、宏の勤め先等を調べ驚いた。宏の勤めていたところは全国で数十万とも数百万とも言われる被害者を出した“保全投資協会”という詐欺的商法の会社だった。

肇子は生前の兄の言葉通りにワープロを“ある人”にもらってもらうため東京の“ある人”の家を訪ねた。“ある人”とは、大学生の時に宏が団長をしている応援団に窃盗容疑が掛けられた事があった。その時に事件を解明して応援団の潔白を証明した“浅見光彦”だった。
肇子は光彦に会い、ワープロの話しをした。

肇子は家に帰る前に東京駅から自宅に電話した。母・睦子は早く帰ってくるように言った。どうやらお客が来ているようだった。
家に帰り門の中に入った時、すぐ脇の植え込みの中から黒い人影が飛び出し逃げるように去っていった。
家の中に入ってみると母が胸から血を流し倒れていた。母は『シ・シ・・・ハ・マ・ダ・・・コ・ガ・・・』とだけ言って動かなくなった。

   
・奇妙な盗難
   
  肇子が訪ねてきてから一週間が経ったが何の連絡がない。光彦は静岡県の三島に行く仕事ができたので、そのついでに肇子の家に行ってみた。そこで母・睦子も殺されていた事を知った。
光彦はもらってほしいと言われたワープロを調べてみたが中は全て消されていて何も判らなかった。どうやら、睦子を殺した犯人はワープロの中身が狙いだったようだ。
しかし、警察は宏の事件後にワープロも調べ中身をプリントアウトしていた。

宏は犯人にとって裏切り者だったか、仲間から抜け出そうとしていたのではないかと光彦は宏の性格を思い出し肇子に言った。

光彦は所轄の沼津署に行った。応対した捜査主任の畑山警部は光彦のカマに引っ掛かり宏が“保全投資協会”のメンバーだった事を言ってしまった。また、光彦の正体が判ってしまい一気に協力的になった。

   
・月潟村異聞
   
  警視庁に“保全投資協会”の内海英光が自首してきた。
身の危険を感じ、警察にかくまってもらうの本当の目的のようだった。

光彦は珍しく兄・陽一郎と朝食をとった。そこで“保全投資協会”の事について話しをした。その中で、内海が自首してきた事を聞いた。
その後、自室に戻りワープロの事を考えていたがある事に気が付いた。

睦子の死後、睦子の友人や知人からお悔やみの手紙が送られてきている。その中に新潟県からの手紙も何枚かあった。
手紙はは、お悔やみの他に昔の思い出等も書かれていて、その内容から睦子は子供の頃、新潟県の月潟村に住んでいたこと、女がてらに級長をしていたこと、父親(肇子にとっては祖父)が警察官だったこと等が書かれていた。
肇子は母・睦子が新潟に住んでいたことなど聞いた事がなかった。
月潟村に行ってみたくなり翌朝、出発した。月潟村は角兵衛獅子で有名な所だった。

肇子は手紙をくれた豊野きせ子の家を訪ね話しを聞いたり、当時、母や祖父母が住んでいた家などを見た。
また、話しの中で母が死ぬ前に言った『シ・シ・・・ハ・マ・ダ・・・』が『獅子の浜田の子』ではないかと考え豊野に聞いてみたが判らないとの事。それならばという事で青崎という人物を紹介された。
青崎は90近い老人であった。青崎の話しでは名前までは覚えていないが祖父が獅子の親子の面倒をみていたとの事だった。

   
・越後妻有郷にて
   
  光彦は何度も肇子の家に電話をしているが留守であった。気になって家に行ったところ隣の住人から旅行に出掛けたと聞かされた。
仕方ないので沼津署に行ってみた。そこで消されていたワープロの中の文章は“妻有”という所に住んでいる作家が書いた“私の越後妻有郷地図”という本を丸々書き写したものであった事を知らされた。しかし、光彦は何故“妻有”なのか?、犯人がわざわざ消したのだから“妻有”何かがあるのではないかと思った。

沼津署からの帰りにまた肇子の家に寄ってみたが留守だった。また、隣の住人から見合いの話しを聞いた。不釣合いな見合いに疑問を感じ縁談を持ち込んだ松本婦人に会う事にした。松本婦人の夫は静岡県県議会議員だった。
松本婦人に会い話しを聞いていたら睦子が新潟県出身だと知っていた。何故知っているのか訊ねると、見合いの相手方の矢野支店長から聞いたとの事。

畑山警部に睦子の親の本籍地を聞いたが判らないとの事。翌日、睦子の本籍のある八王子市役所に行き睦子の親・曾根袈裟男・トクの本籍地を調べようとしていると沼津署の刑事が現れた。
刑事は既に曾根夫婦の本籍地を調べていて、刑事から新潟県中魚沼郡津南町が本籍地である事を聞いた。

光彦は八王子市役所からそのまま新潟県の津南町へ向かった。津南町に着き町役場で曾根夫婦の事を聞いたが古いことなので判る人間がいなかった。しかし、町役場の職員から昔の事をよく知る老人を紹介された。
早速、老人の家に行き話しを聞いてみると、名家の娘だったトクが家を出て曾根の元に転がり込み、トクは勘当されてしまったとの事。当時としては大事件だったらしい。また昔、角兵衛獅子をやっていた浜田という親子を面倒みていた事も判った。
これで睦子のダイイングメッセージの『シシ・ハマダ・コガ・・・』に繋がった。

戦後、浜田徳光は外丸炭鉱の職員として津南町に舞い戻り新しい炭鉱を掘り当てた際に会社を裏切り自分のものにし悪どい事をしていたとの事。
トクの実家の事も聞いてみたが判らないという事で瞽女をしていた老女を紹介してもらった。早速、老女の家に行き話しを聞いたところトクの実家は浜田徳光に騙され身上を潰したとの事。

トクの実家があった十日町市に行き実家があった周辺の店に入り年配の店主に話を聞いていると不審な人物を見かけた。そして、その人物の視線の先に肇子を見つけた。
肇子に声を掛け喫茶店に誘った。そして、尾行されている事を肇子に伝えた。その人物は肇子が月潟村で昼食を食べた食堂にいた谷山元治だった。
光彦は谷山に近づき声を掛けた。秘密の資料は自分が預かっていると・・・・・

   
・五人の邪鬼
   
  光彦と肇子は夜10時近くに新潟から肇子の家に着いた。
早速ワープロの前に行き、宏のフルネームを入力し変換してみると“0165-520-412-210-321-221-215-425-314-219-220-330-510”という数字の羅列が表示された。いったいこれは何なのだろう?
光彦はこの数字を手帳に書き写し、ワープロの電源を切った。
二人は新潟から沼津まで急いで帰ってきたため何も食べていなかったのでインスタントラーメンを食べる事にした。食後、コーヒーを飲みながら肇子は光彦に泊ってくれるように頼み、光彦は観念して泊ることになった。

翌朝、畑山警部から電話があり捜査本部に顔を出してくれるように言われた。捜査本部に行ってみると時計商の木村が朝霧高原で毒入りジュースを飲んで死んでいたとの事。
漆原宏の事件の関係者の死によって宏の事件も他殺の線で捜査を始めた事を聞いた。それに対して光彦は新潟で知った“獅子の浜田”の事とワープロから発見した数字の事を畑山警部に話した。

光彦は不安を感じ肇子を横浜にいるという伯父の家に連れて行った。その後、自宅に帰ると留守の間に男から変な電話があったと聞かされたが思い当たる事がなかった。
また、兄・陽一郎の書斎に行き陽一郎に今までの事を話し警察のスタッフを貸してほしいと頼んだ。

光彦と谷山は会う事になった。待ち合わせの場所に谷山は現れなかったが電話があり数字の羅列の事を言った。すると『ここにあるわけですね』と言った。
光彦が自宅に戻ると谷山から電話があり『そこにあった』との事だった。光彦は重大なミスをおかしたような気がした。
そして光彦は気がついた。銀行コードと支店コード・・・・・。
直ぐに陽一郎に連絡をとり該当する銀行と支店を調べてもらった。12の支店にそれぞれ一千万円の預金をして貸金庫を借りていた。
貸金庫の中には何が入っているのか、現金? 貴金属? いずれにしても数百億とも数千億とも言われる“保全投資協会”の隠し財産である事は間違いない。

   
・消えそこなった幽霊
   
  一人の男が銀行の貸金庫から“もの”を取り出した。待機していた刑事達がその男を尾行したが見失ってしまった。
光彦は捜査方針の転換を兄に言った。中部銀行が怪しいと言い、肇子の縁談の件を話した。また、浜田親子の事も調べてほしいと頼んだ。

光彦は中部銀行の矢野支店長の自宅を訪れ今回の事件の話しをしたが知らない事だと言われてしまった。帰り際に矢野の息子・貴志に肇子は横浜の伯父の家にいると話した。
翌日、肇子のところにやって来た。
沼津の家を長期間ほったらかしにしているので貴志の車で自宅に帰った。家に着くと貴志はワープロの辞書フロッピーが無い事を気にして早く返してもらうようにしきりに言った。
不審に思った肇子は貴志が帰ったあと光彦に電話し、その事と母が亡くなった日に来ていたのは矢野ではないかと言った。

中部銀行が矢野支店長を告訴するらしい事を知った。矢野に全ての責任を負わせ、銀行そのものの安泰を図ったようだ。
矢野は連日、検事の訊問を受けていた。そんなある日、畑山警部が矢野を訪ね、今回の事件の犯人は獅子の浜田の子である事や漆原家との関係等を話し、犯人逮捕は時間の問題だと告げた。

   
・エピローグ
   
  兄と母の墓に肇子は光彦と共に長い祈りを捧げた。
墓は鷲頭山という姿の良い山の麓にある。墓を背にすると駿河湾を一望できる風光絶佳の地である。
祈りが終わり、今回の事件の事を話した。
最後に光彦は肇子に質問した。『やっぱり、横浜の伯父さんのお宅へ行きますか?』
肇子の答えは『私は沼津に住む事にしました。ここに根を下ろして子孫を増やして・・・・・』
   
   
≪主要登場人物≫
   
漆原肇子
  22歳
  静岡県沼津市我入道在住
  家事手伝い
  本作品のヒロイン的存在
   
漆原宏
  33歳
  静岡県沼津市我入道在住
  無職
  漆原肇子兄  浅見光彦の大学時代の同級生
   
・漆原睦子
  静岡県沼津市我入道在住
  主婦
  漆原肇子の母
   
・矢野隆一郎
  静岡県沼津市在住
  中部銀行 沼津支店 取締役支店長
   
・矢野貴志
  27歳
  静岡県沼津市在住
  矢野隆一郎の息子
   
・木村達男
  静岡県沼津市千本浜在住
  時計商
   
・畑山
  静岡県警捜査一課 警部
   
・二宮
  静岡県警沼津署刑事課捜査係係長 警部補
   
   

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